2015年6月6日土曜日。
ダブルヘッダーとなった当日の戦いを、第5戦を直前のこの今!
Maa氏が振り返ります。
今回の相手はCROOZ Rascal Jester
LJL Season 2 Week 3は、試合が1日に2度ある特異日だ。全10ラウンドの折り返しを直前に向かえ、今後の行く末を左右する非常に重要な日となる。この2試合の結果次第で、後半戦を控えた選手たちのモチベーションにも、大きく関わることになる。グランドチャンピオンシップへの進出を目標とするのか、あるいはLJLへの残留を目標とするのか。言うまでもなく、DFMの目標はグランドチャンピオンシップへの進出だ。そのためには、1試合たりとも落としてはならない。
先週、姉妹チーム相手に辛酸を舐めさせられたDFMは、その雪辱を晴らすことが出来るのか。今回の相手はCROOZ Rascal Jesterだ。
最新のメタを追ったPicks / Bans
DFMは面白い構成を繰り出した。VarusとCorkiというPokeに優れたチャンピオンで敵を削り、Disengageに長けたチャンピオンで彼らを支え、接敵を許さない戦術だ。
Varusは最近になって注目されているチャンピオンで、主にMidで用いることが多い。Tear of the Goddessを積み十分なマナを確保した上で、超長距離まで届くPiercing Arrowを放ち相手のヘルスを一方的に削ることが出来るのが彼の強みだ。またUltのChain of Corruptionは、Poke構成で弱点になりがちな相手の強引なイニシエートに対して、効果的なカウンターとして機能する。
Corkiは最近人気に陰りが見え始めてきているものの、元よりPoke性能の高いチャンピオンとして認識されている。またメインのダメージソースであるPhosphorus BombとMissile BarrageはADとAP、どちらでもスケールするため、多種多様なビルド選択が可能というのも特筆すべき点だろう。
そのPoke / Disengage構成を用意したDFMに対し、CRJも面白いカウンターを選択した。Mid Ireliaである。こちらもつい最近から見られ始めるようになったMid Lanerの1体だ。
Ireliaは元来、Topレーンで使われ続けていたが、環境の変遷によりプロ間の試合で頻繁に見られるピックでは無くなってしまっていた。しかし、彼女のBlade Surgeはミニオンを経由して自由自在に間合いをコントロール出来、その点がスキルショットの精度に依存するチャンピオンや、あるいは逃げ性能の乏しいチャンピオンに対するアドバンテージとなる。またYasuoと異なり、(条件はあるが)対象指定のスタンを持っている点から、単独でのキルポテンシャルも高く、自前でサステインを持っているのも評価されるポイントかもしれない。
つまるところ、Mid IreliaはMid Varusの強烈なカウンターということだ。
DFMはCRJのIrelia pickを確認すると、CorkiとVarusのポジションを入れ替える手段に出た。VarusはIrelia相手にまともなレーニングをさせてもらえないが、Corkiならば戦えないことはない。こうした事態を想定してのCorki pickだったのであれば、DFMのPicks / Bansは高度に戦略化されていると言わざるをえない。
苦しい立ち上がり
Topレーンのマッチアップ、Rumble vs GnarはGnarが有利と言われている。それを避けるためにDFMはSwapを選択するが、CRJもそれに対応する形でSwapを返す。
互いのJunglerは優位を確保するためにGankを試みるが、キルには繋がらない。10分過ぎまで自然な形でのレーニングをこなしていくうちに生じるは、レーンの相性差だ。Yutapon Varus / Kazu Janna vs Rkp1 Sivir Lille1 Braumでは前者が有利で、DFMが有利。一方、BonziN Rumble vs Cogcog1では後者が有利で、CRJが有利。一見イーブンにも見える状況だが、明白にDFMが不利を託っていた。特にTopレーンのCS差が、Botレーンでのそれに比べて、著しく開いていたからだ。
更にはMidレーンに注目すると、この時点で差こそ無いものの、IreliaにSheenが出来れば、Corkiは苦境に立たされる。VarusとCorkiのSwapで最悪のマッチアップを避ける事には成功したDFMだが、CorkiにとってIreliaは容易い相手ではない。このままゲームが進行していけば、徐々に不利が広がっていくことになる。
CRJはドラゴンを取り、DFMはTopで一度Gankを成功させた。だが実はBonziN選手が抱えた負債は、たった一度のGankで補えきれるものではなかった。
反撃の嚆矢
この閉塞感のある状況に風穴を空けたのが、DFMのエースYutapon選手だった。Braum不在の隙を突いたVarusのUltはSivirに当たり、Piercing Arrowで華麗にキルを取る。そのキルはタレットに繋がると、これを契機にDFMは一気にゲームを動かしていく。
1vs1のDuelでは非常に強力なIreliaにも弱点がある。スキル的にウェーブクリアは得意でない。それを熟知しているDFMはレーニングを切り上げると、ADCとSupportをMidへローテーションさせ、Midのアウタータレットを破壊した。このままDFMは流れに乗り、2体目のドラゴンを明け渡す代わりに、テンポよくTopのタレットも手に入れた。
Poke構成の強み
焦れったいレーニングをYutaponの個人技で終わらせることの出来たDFMは、ここから構成の強みを見せていく。集団戦が始まる前に遠距離からVarusとCorkiが致命的なダメージを与え、敵の継戦意識を削ぎ落とす。CRJの強引なエンゲージには、Kazu Jannaが風を的確にコントロールし、華麗に敵を退ける。この展開はDFMの望むもので、3000ゴールド近い優位を作ることに成功した。しかし、Season1 Winter Seasonの覇者CRJは一筋縄ではいかない相手だった。
Poke構成の隙
集団戦で数度勝利したDFMではあったが、決定的な有利を得ることは出来ていなかった。これから先、優位を広げるためにはリスクを賭してシージをしなければならない。サイドレーンを形作り、Midレーンをシージするのが基本なのだが、ここで問題が浮き出てきた。CRJが1-3-1構成を取った際に、サイドレーンへ対応に行けるチャンピオンがRumbleしかいないのだ。Ceros選手のCorkiはウェーブをクリアすることは出来るが、Irelia相手に強引なプッシュをすることはあまりに危険で、望ましいものではない。当然、そのIreliaはTPを持っていないため、彼女がサイドレーンへ行っている隙に強引にダイブを仕掛けるのも方法の一つだが、ミニオンウェーブがSivirに消されてしまう。その上ダイブをしようと思ってもSivirにはUltとスペルシールドがあるため、下手にSejuaniやVarusのUltを撃とうものなら、無効化されてしまう可能性すらある。
1-3-1スプリットプッシュへの対抗策が見つからなければ、IreliaとGnarが手を付けられないほど育ってしまう。
しかしそれが見つからない。
集団戦を分けたもの
41分、IreliaとGnarが、それぞれ約60CS差を付けた頃合いで、CRJは十分だと判断したようだ。この時間になるとBaronも一瞬で倒されてしまうため、不用意なスプリットプッシュは事故に繋がりかねないのも理由の一つだろう。ほとんど金額差が無い状況で、集団戦を迎える。
DFMのPoke構成は、強引な集団戦に弱いのは前述したが、その弱点は如実に現れた。40分を過ぎた集団戦では3回連続で敗北を重ねてしまう。その一因にはCRJ apaMEN選手とRkp1選手の見事なプレイも含まれているのだが、いずれにせよ苦い敗北だ。
はっきり言って、DFMの負けが決まったと思っていた。
しかしあんな逆転劇が待っているとは誰が想像しただろうか。
卓越した集団戦
CRJの5th Dragを阻止するための最後の集団戦で、DFMが見せた集団戦は非常に素晴らしかった。CRJが固まった瞬間を見逃さず、Rokenia選手のSejuaniがUltでスタンさせる。そこにYutapon選手のVarusがUltでSnareを重ねてかけ、華麗なCCチェーンで敵を拘束する。Yutapon選手自身はもちろんのこと、BonziN選手のRumbleもしっかりとダメージを与え、敵を倒しきる。アサシンのような立ち回りで回り込もうとしていたIreliaに対しては、Kazu選手のJannaとCeros選手のCorkiがしっかりとマークをし、CRJを寄せ付けない。各々が果たすべきことをしっかりとこなした上で生まれた、素晴らしい逆転劇だった。
DFMの勝因
DFMの構成はPoke構成と言いながらも、決して集団戦で弱い構成ではなかった。特にAoEが強力でWombo comboに成功さえすれば、Pokeが多少足らずとも十分に戦えるため、しっかりと組み上げた構成の底力というのが発揮されたように思う。
またYutapon選手のソロキルから始まった、全てのアウタータレットまで繋がるローテーションは、淀みなく美しかった。あのまま何もアクションが起きなければ、より苦しい中盤を迎えることになっていたはずだ。そのきっかけを作ったYutapon選手は、やはりエースを飾るにふさわしい。
しかしながら、CRJのミスに多々助けられたのもまた事実である。CRJがいくつかの場面でより良い判断をしていたら、この結果は絶対に起こりえなかっただろう。いくつかの偶然により生まれた逆転劇であるのは、否定できない事実だ。
この試合は先週のRF戦よりも拮抗したゲームで、最後まで勝負の行方が分からなかったた。そのため、選手は酷く摩耗したと思う。しかし無情なり。今日のスケジュールはこれで終わりではない。選手たちの心境を考えると痛み入るが、最後まで頑張って欲しい。
ライター:President Maa
写真・編集:DetonatioNスタッフ