FocusMe(FM)の一見して奇妙な構成は一分の隙を見せることなく、完膚なきまでにRabbitFive(RF)を叩き潰した…それは具体的に一体どのようなものだったのでしょうか?
元FocusMeメンバーであったMaa氏が、戦略を徹底分析!
その後篇です!
第3戦の詳細とは…?
まずスタート同時に、RFが致命的なミスを犯した。
RFが選択した陣形はスプレッドアウト。
全てのジャングルの入り口にワードを置き、敵のインベードを察知するための陣形だ。本来はここでカウンタージャングルを防ぐために、Nunuのスタート位置を確認しなければならなかったのだ。
RF Awaker選手はトップのDouble Golemsからスタートし、FM Astarore選手はトップのGrompからスタートした。
NunuはSmiteを温存しつつGrompでLevel 2になると、急いで敵のRed Buffへ急行し、赤バフを狩っている最中のJ4を発見する。赤バフのヘルスは残り300程度であったが、ジャングルクリアーの遅いJ4ではNunuのカウンタージャングルに対応しきれなかった。
J4はここ最近のパッチで尽くNerfされ、今でも一線級のJunglerではあるものの、ジャングルクリアーが遅く、また序盤のジャングリングがかなりシビアになっている。そのため、カウンタージャングルには比較的弱いチャンピオンと言える。ポーション無しでジャングルを回り続けることは出来ず、この手のハプニングへの対応が非常に苦手だ。
その虚を突いたFM Astarore選手のコンシュームが赤バフを平らげた。これからRF Awaker選手がバフを手に入れるためには、九分過ぎまで待たなければならなくなる。
そうして最悪のスタートを迎えたRFであったが、このタイミングでBotレーンでもミスが生まれていた。配信には映らなかったのだが、Lv2の時点でRF Zerost選手-Kalistaが何らかのミスを犯し、瀕死のダメージを受けていたのだ。そのヘルス量は、ポーションを持ってしても補えないほど致命的だった。
Botレーンで大幅にアドバンテージを得たFMは、FM Yutapon選手の操るSivirとFM Kazu選手が操るMaokaiが、そのプッシュ性能を最大限に活かし、ミニオンウェーブを常に敵のタレット下まで送り込む。こうなってしまうとラストヒットが取り難くなるのはもちろんのこと、執拗なカウンタージャングルに晒されるAwaker選手を助けに行くことが出来ない 。何故なら機械じかけのように正確に作用するタレットが、経験値とゴールドの源であるミニオンを倒しきってしまうからだ。
このように生まれた敵の緩みを逃さないのはFM Kazu選手。何とかして青バフを得たいJ4ではあったが、FM Kazu Maokaiが与えるプレッシャーだけで、撤退を余儀なくされてしまう。Maokaiのアシストを得たNunuが悠々自適に 二つ目の青バフを確保した時点で、J4は一時的にゲームからの退場を宣告されたも同然だった。そして、もっと大げさに言ってしまえば、彼のゲームはこれで終わりだった 。
Botでの苦しいレーン戦を覆すことの出来るジャングラーはもういない。
ここからRFが勝つためには、ソロレーナーが自力で敵を倒さねばならならいのだ。
しかしMid RF Estelim選手のチャンピオンはEzrealだ。Ezreal vs Dianaのマッチでは、基本的に互いがFarmに終始するだけになりがちだ。著しい実力差があれば、どちらかにキルが生まれる可能性も無いわけではないが、RF Estelim選手とFM Ceros選手の実力はほぼ同等と言って差し支えない。つまり、ここ(Mid)でのチャンスは存在しない。
Top Moyashi選手のチャンピオンはRumbleだが、序盤にキルを取りに行けるチャンピオンでは無いし、そもそも相手のFM BonziN選手はLuluを使っている。序盤は苦境に立たされること間違いなしだ。絶望としか言いようの無い状況が、RFの目の前に立ちはだかってしまった。
そうして、真綿で首を絞めるようなゲームは進んでいく。Nunuは執拗にJ4を追い回し、彼のファームを阻害する。
レーンで優位を得たFM Kazu選手のMaokaiは、FM Yutapon選手に負担を与えることなくレーンを離れることが出来る。ワードをふんだんに購入し、それを相手ジャングルに突き刺していく。
Yutapon選手も敵がレーンから離れられないよう、常にミニオンウェーブを相手タレットに送り続け、Ceros選手もビルドが遅れない程度にワードを購入し、置ける限りのワードをジャングルに埋設する。
FMのミニマップを見れば、RFのジャングルは自軍のレーンのように明るく照らされていたことだろう。
二回目の赤バフが湧くと、これは流石にRF Awaker選手の手に赤バフが渡った。その時、会場には拍手が起きていたと思う。それほどまでに、Awaker選手は追い回され、苦しめられていた。会場の心は恐らく一つにまとまっていた。「どうか、彼にバフを与えてください。」と。
しかしFMにしてみれば、このバフはくれてやったと表現するのが適切なのかもしれない。全てのバフを管理するには限界もあるし、そもそもFMは赤バフが湧く前に1st ドラゴンを確保しているからだ。
このゲームでのファーストブラッドは、11分過ぎにようやく生まれた。Maokai, Nunu, SivirがUltとFlashを切りMidを強襲すると、二段ブリンクを持ったEzrealですら逃げ切ることは出来なかった。
この時点までキルが生まれていないのにも関わらず、ゴールド差は既に2kもの開きがあった。キルトタレットをFMが手中に収めると、それは3k差になる。この金額差は序中盤にしては大きな差だが、決して覆らない差では無い。しかし、RFにとっての問題点は、BotとMidのアウタータレットを失ってしまったことであった。
タレットには視界がある。初心者にとっては実感が無いかもしれないが、タレットを失うことによって生じる一番のディスアドバンテージは視界を失うことだ。タレットの視界が無くなってしまえば、ジャングルへのフリーパスが生まれる。ただでさえ荒らされ続けたRFのジャングルが、今まで以上に熾烈に荒らされるのだ。率直に言って、この時点でゲームの勝敗は決まったものだと私は判断していた。
二つのアウタータレットを先取したFMは1-3-1の構成を取ると、BotにCeros-Dianaを送り込んだ。このDianaというチャンピオンは逃げ性能に欠けるが、Duelに強く、更には自身にシールドを与えることが出来るためヘルスを削ることなくジャングルクリアーが出来る。つまりFMがこの試合においてDianaをピックしたのは、こういった局面を迎えた時、敵のジャングル資源を枯渇させる目的で投入したのだろう。
既にあがくことすらままならない状況を迎えていたRFで、唯一善戦していたのはTopのMoyashi選手だった。ここまで良いところの無かったJ4がLuluのUltを落とさせると、彼が何とかしてソロキルをもぎ取った。しかし時既に遅し、戦況はのっぴきならないほど逼迫していた。
キルはほとんど生まれないのに、ゴールド差は徐々に開いてく。RFにはこれを防ぐ手立てが無かった。
最終的に我々が目にしたのは、昨年度覇者のFMが得た、貫禄の勝利であった。
全てはオールプランドだとFM Ceros選手とYutapon選手は試合後に語っていた。
それにしても今試合を決定付けたこのFMの構成は、非常に理にかなったものであった。
ピックの段階から相手を混乱させ、試合が始まってからは相手を寄せ付けない組織だったプレイ。これこそがFMが王者たる所以なのかもしれない。
RFに関して言えば、やはり細かいミスが目立つ結果となってしまったが、しかしながら、彼らが一試合目に発揮したパフォーマンスはFMになんら引けを取ることはなかった。そもそも、彼らがLJLの檜舞台に上がってきたのは今年からのことなのだ。
一体誰がこの結果を予想したのか。新規参入の三チームと、昨年度からLJLに居座る三チームには、絶対的な開きがあると思っていた人が大半ではないだろうか。そう考えれば、彼らの健闘は讃えられこそすれ、謗りを受けるようなものでは無かったはずだ。来シーズンこそ優勝をと、選手たちは胸に固く誓ったことだと思う。
そうして、LJL Season 1の優勝とトルコ行きの切符は、FMが手にするととなった。
日本のチームが世界を相手にどこまで戦えるのか、まだ誰に も予想は付かないと思う。しかし試合後のインタビューでYutapon選手が語ったように、FMは出来る限りのことを尽くしIWCIに向かう。既に先日から彼らはアメリカに飛び、スポンサーのLogicool様(Logitech)傘下チームであるCloud9の手助けの元、ブートキャンプを行っている。そこでしか得ることの出来ない貴重な経験を活かし、願わくばワイルドカード枠を勝ち取り、彼らの実力を世界に誇示して欲しい 。
世界への挑戦は、始まったばかりだ。
ライター:President Maa
写真・編集:DetonatioNスタッフ
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